睡眠時無呼吸症候群(SAS)について

睡眠時無呼吸症候群

いびき・無呼吸は「放っておいてよいもの」ではありません。
睡眠中にいびきや呼吸が止まる状態(無呼吸)が繰り返されて睡眠の質が低下する病気を「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」といいます。
睡眠の質が低下することで、

  • 日中の強い眠気/集中力低下/仕事や学業のパフォーマンス低下
  • 交通事故や労働災害のリスク増加

につながります。さらに、高血圧・脳梗塞・心筋梗塞・糖尿病・脂質異常症 などのリスクが高まることもわかっています。特に重症の場合は、脳・心臓の病気のリスクが健常者の2〜3倍程度になるとの報告があります。

なぜ いびき・無呼吸が起こるの?

睡眠中はのど周りの筋肉がゆるみ、仰向けでは重力により空気の通り道(気道)が狭くなります。特に

  • 肥満
  • あごが小さい
  • 加齢

などがあると、さらに気道が狭くなりいびきが起こりやすくなります。
気道の狭窄が進むと、空気が通らなくなり、呼吸が止まる状態(無呼吸) が起こります。
※ただし、原因は1つとは限らず、複数の要因が重なって起こることも少なくありません。

  • なぜ いびき・無呼吸が起こるの01
  • なぜ いびき・無呼吸が起こるの02
  • なぜ いびき・無呼吸が起こるの03

受診から診断までの流れ

① 診察
鼻〜喉までを内視鏡で確認し、気道に病気がないかチェックします。
※喉より奥(気管〜肺)の病気が疑われる場合(咳や血痰、喘鳴など)は、呼吸器内科をご案内します。
② 自宅でできる簡易検査
睡眠中の呼吸状態を測定し、無呼吸の程度を確認します。
睡眠状態のスクリーニングに役立ちますが、この検査だけでは睡眠時無呼吸症候群の確定診断にはなりません。
③ 精密検査(ポリソムノグラフィ:PSG)
呼吸・酸素飽和度・胸腹部の動き・脳波など詳しく確認する検査です。従来は入院が必要でしたが、当院では、症状や状況に応じて自宅で実施できる検査をご提案できる場合があります。
精密検査は、SASの確定診断に必要な検査です。
※入院での精密検査をご希望される場合や、必要と判断した場合には適切な医療機関のご紹介をさせて頂きます。

【診断の目安(AHI:無呼吸低呼吸指数)】
1時間あたりの低呼吸(呼吸状態が悪くなる)・無呼吸(呼吸がとまる)の回数を示す数値です。
  • 5〜15回/時:軽症
  • 15〜30回/時:中等症
  • 30回以上/時:重症
「症状あり+AHI5以上」または「AHI15以上」で睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

治療について

睡眠時無呼吸症候群に対しては、患者様の診察所見や検査所見の結果に応じて以下の治療をご提案していきます。

CPAP(シーパップ)治療

鼻から空気が送り、気道を広げて無呼吸を防ぐ治療です。

  • 簡易検査:AHI40以上
  • 精密検査:AHI20以上

で保険適用の対象となり、月1回の通院が必要です。

マウスピース

歯科で作成します。下あごや舌が下がらないように固定し、気道を確保します。

体位療法

仰向けでは喉が閉塞しやすくなりますが、横向きで寝ることで改善する場合があります。

減量療法

減量により喉周囲の脂肪が減ることで、空気の通りの改善が期待されます。

手術療法

大きな扁桃腺、鼻中隔弯曲症など、原因が解剖学的に明らかで、手術によって改善が見込める場合や、CPAPやマウスピースが継続困難/効果が不十分な場合に検討されます。適応や費用は症状や施設により異なります。

いびき・無呼吸は「いびきがうるさい」だけではなく、生活の質・安全・健康寿命に関わる病気です。

  • いびきが大きい
  • 睡眠中に息が止まっていると言われた
  • 日中の強い眠気がつらい

このような症状がある方は、是非一度ご相談ください。
耳鼻咽喉科医として、原因の確認から検査・治療までサポートいたします。

当院のCPAP治療に関して

当院のCPAP治療(持続陽圧呼吸療法)について-機器のご案内-
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療では、CPAP治療を毎日無理なく続けられることが大切です。CPAP機器には複数のメーカー・機種があり、機能や使用感には個人差があります。当院では、複数のCPAP機器の中から、患者様の症状や生活に応じて選択できるよう体制を整えています。

当院の取り扱い機器

  • ドリームステーションシリーズ(フィリップス)
  • Aie Sense11(レスメド)
  • Air Mini(レスメド)
  • SleepStyle RX(Fisher&Paykel)
  • ムラタCPAP MX(村田製作所)

フィリップス社製 CPAP

呼吸に合わせた、吸う時と吐く時の圧制御機能などが搭載されており、自然な呼吸をサポートする設計の機器がラインナップされています。

レスメド社製 CPAP

無呼吸やいびきの変化を細かく検知し、状況に応じた圧調整が行われる機種があり、使用状況や治療データの管理もしやすい点が特徴です。
Air Miniは、小型で携帯性にも優れており、出張や旅行が多い方にも使いやすい機器です。

Fisher & Paykel社製 CPAP

加温・加湿機能に優れており、乾燥がきになる方でも使用しやすい設計の機種が用意されています。
ボタンが大きく、シンプルで操作がしやすいのも特徴です。

ムラタ製作所製 CPAP

コンパクトで静音性に配慮した、日本人の生活環境に合わせた設計の機器です。操作がシンプルで、扱いやすいタイプを希望される方に向いているとされています。ワンハンドサイズの本体とサイレンサー・加湿用水タンクを分離できるようになっており、出張や旅行が多い方にも使いやすい機器です。

※上記は各機種の一般的な特徴を説明したもので、実際の感じ方や使い心地には個人差があります。また、特定のメーカーや機種の優劣を示すものではありません。患者様一人ひとりに合うことが大切です。

当院では、

  • 治療効果
  • 装着感・使い心地
  • 生活スタイル(出張・旅行など)

を踏まえて、患者様一人ひとりに合ったCPAP治療をご提案します。
すでにCPAP治療中の方の機器に関するご相談(継続・変更など)も可能ですので、お気軽にご相談ください。

CPAPを始めた方へ うまく使えていない時はどうすれば?

CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、できるだけ長く・無理なく続けることが大切です。一般的に、「1夜あたり4時間以上、かつ月70%以上の使用」が治療継続の目安とされ、4時間以上の使用で、心血管病リスクや日中の眠気の改善がより期待できると報告されています。
一方で、導入直後は違和感や使いづらさを感じる方も少なくありません。しかし、原因を見つけて調整すれば改善できる場合が多いため、困った時は一人で悩まず、ご相談ください。

「CPAP導入初期」がとても大切です

CPAPのトラブルは開始後1週間以内に生じることが多いとされています。
また、開始1カ月以内に継続が難しくなる方が一定数いらっしゃると言われており、初期の違和感(眠れない・鼻の症状・装着のつらさなど)が、そのまま中止理由になってしまうこともあります。早めに気づいて調整することが重要です。

実際に多いトラブルと対処

【1】マスクのトラブル

  1. 空気が漏れる/違和感がある
    … マスク固定の調整、形状・サイズ変更で改善することがあります。
  2. 無意識に外してしまう
    … マスクの種類変更や、医師と相談の上で設定の見直しを検討します。開始初期は違和感が強いこともあります。無理をせず、少しずつ慣れていくことが大切です。
  3. なかなか慣れない
    … 最初から「毎回きっちり4時間以上」を目指さなくても大丈夫です。できる範囲から始めて、徐々に時間を延ばしていきましょう。
  4. ベルトが気になる、ベルト跡
    … マスク固定の見直しや、形状・サイズ変更で改善することがあります。
  5. マスクの当たる部分が痛い / 赤くなる
    … マスク固定の見直しや、形状・サイズ変更で改善することがあります。
  6. かぶれ / 痒み
    … マスクやベルトの素材が肌に合っていない可能性があります。形状・素材の変更を検討します(メーカーによってラテックスフリーのマスクもあります)。マスクの洗浄不足で皮膚に炎症が生じる可能性もあるため、定期的なお手入れも大切です。
  7. チューブやマスクの結露
    … 近年のCPAPは結露対策がされていますが、特に冬場や加温加湿機能を使用する時にチューブ内に水が付着する事があります。チューブを布団に入れるなど、チューブ自体を温めることで改善する場合があります。

【2】鼻の症状

  1. 鼻づまりで空気がうまく通らない
    … アレルギー性鼻炎や鼻中隔弯曲症などが背景にある場合、治療により使いやすくなることがあります。また、加温加湿機能で、鼻の冷えや乾燥を抑えることでも、鼻づまりの改善が期待できます。
  2. 鼻が乾燥する/冷たくて痛い
    … 加温加湿機能の使用、室内の湿度・温度(デフォルト:冬)にも注意して下さい。チューブを布団に入れて温めるのも有効と思われます。鼻腔内の保湿(ワセリン処方・市販の保湿のジェルなど)が役立つ場合もあります。
  3. 鼻血が出やすい
    … 鼻が乾燥したり、冷えたりするのが要因となることがあります。加温加湿機能や鼻の保湿、室内の温度・湿度にも注意して下さい。鼻中隔弯曲症により、空気の多く通る側が乾燥して鼻出血をきたす可能性もあります。
  4. 鼻水が出てくる
    … アレルギー性鼻炎がある場合は治療を行います。鼻が乾燥したり、冷えたりするのが原因の可能性もあります。鼻腔内の保湿(ワセリン処方・市販の保湿のジェルほど)が役立つ場合もあります。加温加湿機能を使う他、室内の温度・湿度にも注意して下さい。

【3】その他

  1. 息苦しい
    … ランプ機能(使用者が寝たのを確認してから圧を上げていく機能)を備える機種があります。また、機種によっては、息を吸う時と吐く時で圧を調整することもでき、改善が期待できます。改善しない場合には、医師と相談の上で圧設定の見直しで楽になる場合があります。
  2. 口から空気が漏れる、口が乾く
    … 口を開けており、CPAPから流れた空気が喉より出ている可能性があります。フルフェイスマスクや口テープが役立つ場合があります。
  3. 途中で起きてしまう
    … 圧設定や空気漏れが影響していることがあります。設定調整を検討します。他に口からの空気漏れも影響を及ぼしている可能性があります。口テープの使用もご検討下さい。必要に応じて薬の併用を行うこともあります。
  4. 眼が乾く
    … マスクから空気が漏れて、目にかかっている可能性があります。マスク固定の調整、形状の変更を検討します。
  5. 腹部が膨れた感じがある/胃痛がある/胸に違和感がある
    … 空気が食道へ流れている可能性があります。圧設定の見直しを検討します。
  6. 寝付けない
    … ランプ機能(使用者が寝たのを確認してから圧を上げていく機能)を備える機種があり、使用する事で楽になることがあります。患者様の睡眠環境が悪い場合には指導させて頂きます。必要に応じて薬の併用を検討することもあります。それでも改善しない場合には、CPAP自体を別機種に変更してみることで改善できる場合もあります。

その他にも、患者様ごとに異なる問題が生じることがあります。
困った際には、CPAPを中止してしまう前に、是非ご相談下さい。
一緒に無理なく続けられる方法を考えていきましょう。