- 2026年4月22日
アデノイド増殖症・扁桃肥大症とは?
お子さんのいびきや口呼吸、眠っているときの無呼吸が気になって受診される方は少なくありません。その原因としてよくみられるのが、「アデノイド増殖症」や「扁桃肥大症」です。どちらも、鼻やのどの奥にあるリンパ組織が大きくなることで、空気の通り道が狭くなり、さまざまな症状を引き起こす状態です。特に小児では比較的よくみられ、睡眠の質や呼吸、耳や鼻のトラブルにも関わるため、早めに気づくことが大切です。
アデノイドや扁桃とは?
アデノイドや扁桃は、鼻や口から体内に入ってくるウイルスや細菌に対して、最初に働く免疫組織です。
一般にはまとめて「扁桃腺」と呼ばれることがありますが、実際にはいくつかの組織に分かれています。鼻の奥にあるものがアデノイド、正式には「咽頭扁桃」です。のどの左右に見えるものが口蓋扁桃で、一般に「扁桃腺」と呼ばれるのはこの部分を指すことが多いです。
これらのリンパ組織は、鼻やのどの周囲を取り囲むように配置されており、この輪状の構造は「Waldeyer(ワルダイエル)咽頭輪」と呼ばれます。外から入ってきた病原体に対して免疫反応を起こす役割を担っていますが、成長の過程で大きくなりすぎると、今度は呼吸や通気の妨げになることがあります。
成長とともに見られる変化
アデノイドや扁桃は、乳幼児期から学童期にかけて発達しやすい組織です。一般に3歳ごろから目立って大きくなり、6〜7歳ごろにかけて存在感が強くなります。その後は体全体の成長に伴って相対的に小さくなり、中学生ごろになると気にならなくなることが多いとされています。
ただし、すべてのお子さんが同じような経過をたどるわけではありません。体質や炎症の起こりやすさ、鼻の通りの悪さなどが関係して、アデノイドや扁桃が過度に大きくなってしまうことがあります。アデノイドが過剰に大きくなった状態を「アデノイド増殖症」、口蓋扁桃が過剰に大きくなった状態を「扁桃肥大症」といいます。
アデノイド増殖症・扁桃肥大症の症状
代表的な症状は、いびきと睡眠中の呼吸のしづらさです。鼻の奥にあるアデノイドが大きくなると、鼻の空気の通り道が狭くなるため、鼻づまりが続きやすくなります。すると自然に口呼吸が増え、眠っているときにいびきをかくようになります。さらに口蓋扁桃も大きい場合には、のどの奥の空間まで狭くなるため、睡眠中に呼吸が一時的に止まる、いわゆる無呼吸が起こることがあります。
お子さんの場合、単に「いびきをかく子」と見過ごされることもありますが、毎晩のように大きないびきがある、呼吸が止まって見える、寝相が激しい、何度も寝返りを打つ、寝汗が多いといった様子があれば注意が必要です。眠っていても十分に休めていないことがあり、朝すっきり起きられない、日中にぼんやりする、機嫌が悪い、集中しにくいといった形で影響が現れることもあります。小さなお子さんでは眠気としてはっきり現れず、落ち着きのなさや注意力の低下として気づかれることもあります。
口呼吸が長く続くことによる影響
アデノイドが大きいお子さんでは、鼻で呼吸しにくいため、日中も口が開いたままになりやすい傾向があります。こうした状態が長く続くと、口の中が乾燥しやすくなり、のどの炎症や口臭の原因になることがあります。また、睡眠中の口呼吸は睡眠の質をさらに低下させる一因にもなります。
さらに、成長期に慢性的な口呼吸が続くと、口元や顔つきに特徴的な変化がみられることがあります。たとえば、口が閉じにくい、下唇が下がる、顔が縦に長く見えるといった変化です。こうした顔貌は一般に「アデノイド顔貌」と呼ばれます。ただし、これはアデノイドだけで決まるものではなく、鼻づまりの程度や口呼吸の期間、骨格の発達など複数の要素が関わります。
耳や鼻への影響
アデノイド増殖症では、耳のトラブルが起こることもあります。鼻の奥には、耳と鼻をつなぐ「耳管」という通り道がありますが、アデノイドが大きくなるとこの耳管の開口部をふさいでしまうことがあります。すると中耳の換気がうまくいかなくなり、中耳に液体がたまりやすくなります。これが「滲出性中耳炎」です。
滲出性中耳炎では、強い痛みがないことも多いため気づかれにくい一方で、聞こえにくさや、呼びかけへの反応の鈍さ、言葉の発達への影響につながることがあります。特に小さなお子さんでは、自分で聞こえにくさを訴えにくいため、繰り返す鼻症状や口呼吸とあわせて耳の状態も確認することが重要です。
また、鼻の通りが悪い状態が続くと、鼻汁がたまりやすくなり、鼻副鼻腔炎を繰り返すこともあります。いつも鼻がつまっている、鼻水が長引く、口を開けていることが多いといった症状がある場合には、単なる風邪ではなく、アデノイドや扁桃の影響が背景にあることもあります。
アデノイド増殖症・扁桃肥大症の見逃せないサイン
アデノイド増殖症や扁桃肥大症で問題になるのは、空気の通り道が狭くなることそのものだけではありません。睡眠中に呼吸が妨げられることで、深い睡眠が妨げられ、体と脳が十分に休めなくなることが重要です。お子さんの成長には、質のよい睡眠が欠かせません。そのため、睡眠の質が落ちることは、日中の生活や発達にも影響します。
たとえば、朝起きるのがつらい、寝ても疲れが取れない、食事に時間がかかる、日中に集中が続かない、園や学校で落ち着きがないなど、一見すると呼吸とは関係なさそうな変化が、実は睡眠中の呼吸障害と結びついていることがあります。重い場合には、成長や全身状態への影響も考慮する必要があります。
アデノイド増殖症・扁桃肥大症の診断
診断では、まずご家庭での様子が大切な情報になります。睡眠中のいびきや無呼吸は診察室で直接確認しにくいため、ご家族に普段の様子を観察していただくことが重要です。いびきの大きさ、呼吸が止まっていないか、口を開けて寝ていないか、寝汗が多くないかなどを確認し、可能であれば動画を記録して受診時に持参していただくと、診断の助けになります。
診察では、鼻やのど、耳の状態を確認し、必要に応じて内視鏡検査や聴力検査、睡眠検査を行います。口蓋扁桃は口の中から観察できますが、アデノイドは鼻の奥にあるため、細いカメラで大きさや耳管への影響を確認します。また、滲出性中耳炎の有無や中耳の状態もあわせて評価します。
アデノイド増殖症・扁桃肥大症の治療
・睡眠の質が下がっている場合は手術を検討します。
全身麻酔で、アデノイド切除+口蓋扁桃摘出を行います。滲出性中耳炎がある場合には、「鼓膜チューブ留置術」も同時に行うことがあります。空気の通り道を広げ、いびき・無呼吸・中耳炎のリスクが改善します。
・対症療法として保存的加療を行うこともできます。
アデノイド増殖症に対しては、鼻からの点鼻薬や薬剤で軽度ですが、アデノイドを縮小させることが出来ます。風邪をひいた時のみのいびき・無呼吸であれば手術をせずに対処出来る可能性があります。しかし、あくまで「対症療法」であるため、常にいびき・無呼吸が生じている場合には手術が有効です。
受診を考えたいサイン
お子さんに、毎晩のようないびきがある、眠っているときに呼吸が止まることがある、いつも口を開けている、鼻づまりが続いている、聞き返しが多い、中耳炎を繰り返す、寝てもすっきりしない、日中に集中しにくいといった様子がある場合は、耳鼻科で相談することをおすすめします。いびきは珍しい症状ではありませんが、続いている場合は治療が必要な状態が隠れていることがあります。