- 2026年3月26日
いびき・無呼吸の原因と対策|睡眠時無呼吸症候群(SAS)
いびきは身近な症状であり、単なる睡眠中の音だと軽視されがちですが、呼吸機能の異常が潜んでいる場合があり、健康状態を示す重要なサインとなることがあります。とくに、睡眠中に呼吸が止まる現象を伴う場合には、「睡眠時無呼吸症候群」という疾患の可能性を考える必要があります。
2003年のJR山陽新幹線での居眠り運転事故をきっかけに、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が社会問題として知られるようになりました。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質を低下させるだけでなく、日中の生活や全身の健康にも影響を及ぼすことがあります。本人が自覚しにくいという特性もあり、発見が遅れるケースも少なくありません。いびきは、いずれ無呼吸になる可能性があるため、症状を放置しないことが大切です。
いびき・無呼吸が起こる仕組み
睡眠中は全身の筋肉が弛緩し、気道がやや狭くなる傾向があります。通常は呼吸が維持されますが、特定の条件が重なると気道の狭窄が強まり、空気の通過が妨げられます。このとき、気道内の組織が振動することで「いびき」が生じます。
さらに気道が大きく狭くなると、空気の流れが途絶え、「無呼吸状態」が発生します。この状態が一晩のうちに何度も繰り返されることで、体内の酸素供給が不安定となり、身体への負担が蓄積されていきます。
睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠っている間に10秒以上の無呼吸・低呼吸が1時間あたり平均5回以上、または7時間の睡眠中に30回以上繰り返される病気です。主な症状は、大きないびきや日中の強い眠気、起床時の頭痛です。
睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群では、いびきや無呼吸によって睡眠の質が低下し、日中の強い眠気や集中力の低下を招きます。その結果、仕事や学業の効率が落ちるだけでなく、交通事故や労働災害のリスクを高める要因にもなります。
また、身体が十分な休息を得られなくなると、自律神経やホルモンバランスが乱れ、代謝にも悪影響を及ぼします。その結果、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の進行につながることが知られています。
加えて、睡眠時無呼吸症候群は、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気とも深く関係しています。重症の場合には、脳卒中や心血管疾患の発症リスクが2〜3倍程度高くなるという報告もあります。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の主な原因は、睡眠中に喉の空気の通り道(上気道)が狭くなり塞がる「閉塞性(OSA)」が大部分を占めます。
主な要因は、肥満、喉の構造(小さい顎・扁桃肥大)、加齢による筋力低下、飲酒です。稀に脳の呼吸指令が止まる「中枢性」もあります。
睡眠時無呼吸症候群の診断基準
睡眠時無呼吸症候群の評価には、「無呼吸低呼吸指数(AHI)」と呼ばれる指標が用いられます。これは1時間あたりの無呼吸および低呼吸の回数を示すもので、重症度の判断に直結します。症状を伴い指数が5以上、または症状の有無にかかわらず15以上で診断されます。数値に応じて軽症、中等症、重症に分類され、それぞれに応じた治療方針が検討されます。
【眠気など症状の自覚+AHI 5以上】か【AHI 15以上】で確定
5〜15回/時:軽症、15〜30回/時:中等症、30回以上/時:重症
※診断基準のAHIは精密検査の数値となります。
睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群の治療は、症状の程度や原因に応じて選択されます。
【1】 CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)
CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な治療法です。睡眠中に鼻に装着したマスクから一定の圧力をかけた空気を送り込み、気道を広げて無呼吸を防ぎます。中等症〜重症の患者に対し健康保険が適用され、いびき・日中の眠気の改善、生活習慣病の予防効果があります。保険が適用される目安は以下のとおりです。
簡易モニター検査でAHI 40回/時以上
精密検査でAHI 20回/時以上
基本的に毎晩続ける必要があります。
月1回の受診が必要で、自己負担は月あたり約5,000円かかります。
【2】マウスピース(口腔内装置)
歯科で作成します。下あごや舌が下がらないようにして気道を広げます。保険適用で作ると自己負担は1〜数万円程度、自費の場合は数万円〜十数万円かかることもあります。
【3】体位療法
仰向けを避け、横向きに寝ることで舌がのどに落ちにくくなります。誰でもすぐに始められる方法です。
【4】減量療法
体重を減らすことで症状が改善し、CPAPが不要になる場合もあります。
【5】手術療法
・鼻中隔弯曲症
鼻腔の曲がりがあって、広さに左右差がある場合、適応となります。曲がりを矯正し、左右差を無くすことでCPAPが使用しやすくなります。
・口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)
扁桃腺やのどちんこ(口蓋垂)を切除し、のどを広げます。
・舌下神経電気刺激療法
顎に小さな装置を埋め込み、睡眠時に舌の神経を刺激して舌を前に動かし気道を広げます。CPAPが合わない方への新しい治療法ですが、適応や費用は施設ごとに異なります。
早期受診の重要性
「いびきが大きい」「呼吸が止まっていると指摘された」「日中に強い眠気がある」といった症状は、見逃してはならない重要なサインです。これらを放置すると、全身の健康に影響が及ぶ可能性があります。一方で、適切な診断と治療を受けることで、症状の改善は十分に期待できます。
気になる症状がある場合は、まず耳鼻科でご相談ください。